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ウィンブルドンのAI活用事例:質問を選べる「Match Chat」の工夫
ウィンブルドンのAIアシスタント「Match Chat」は、自由入力に加えて質問を選ぶ入口を用意しています。公式発表と開発者の論文から、展示会や講演の案内を考えるヒントを紹介します。
主カテゴリー:イベント企画・参加者体験
この記事でお伝えすること
来場者が選びやすい質問と、その回答に必要な情報を分けて考えられる。
対象:イベントのWebサイトやアプリ、来場者向けの案内を企画する運営・制作担当者
イベントのWebサイトを作るとき、運営側はプログラムや会場図、出展者一覧などを用意します。ただ、必要な情報を載せても、初めて来る人が、自分に合う催しをすぐに見つけられるとは限りません。たとえば、AIに関心はあっても詳しくない来場者にとって、「生成AI」「業務自動化」と並ぶ講演名だけで参加先を選ぶのは難しいかもしれません。
そこで、質問に文章で答えるAIチャットボットを案内に使う方法が考えられます。ただ、画面に「何でも聞いてください」と書くだけでは、来場者が質問を考えるところから始める必要があります。どんな情報が得られるのかを、運営側から示せないでしょうか。
今回取り上げるのは、英国のテニス大会・ウィンブルドンで使われた「Match Chat」です。観戦中の疑問に答える仕組みですが、質問の入口や情報の扱い方には、展示会や講演の案内を作る方にも参考になる工夫があります。来場者が聞きたいことを、無理なく選べる案内という視点で読み解きます。
この記事は、2026年9月27日までに確認した公式発表と開発者の論文をもとにしています。紹介するのは2025年の仕組みと2026年の機能発表で、9月に新しく発表された事例ではありません。
目次
観戦中の疑問に答える「Match Chat」
Match Chatは、観客が試合について質問すると、AIがデータをもとに回答する機能です。大会を主催するオールイングランド・ローンテニス・クラブとIBMは、2025年6月17日に導入を発表しました。公式アプリとWebサイトから、用意された質問を選ぶことも、自分の言葉で入力することもできると説明しています。IBMの2025年発表・日本語版
得点表で今のスコアを確かめることと、試合のどこに注目すると面白いかを知ることは、少し違います。Match Chatは、観客自身の疑問から試合を理解するための入口と捉えることができます。この記事では、その観戦を助ける部分に注目します。
2026年6月22日の発表では、回答の一部に関連する写真や動画も含めるようになったと紹介されています。また、試合の流れを左右したプレーとその理由を説明する「Key Moments」も発表されました。数字を表示するだけでなく、その数字に関わる場面を理解してもらう方向へ、説明の方法を広げています。IBMの2026年発表
質問の候補を、来場者が考える手がかりにする
2025年9月に公開された開発者の論文には、Match Chatの入口が説明されています。利用者は試合のスコア画面から質問を選ぶか、自由に入力して会話を始めます。さらに、選手の成績や試合の統計などの分類を選んだ後、質問候補から絞り込むこともできます。開発者論文・第4節
ここで参考にしたいのは、「質問を選ぶ」と「自分で書く」の両方を残している点です。何を知りたいか決まっている人は直接質問できます。一方、詳しい用語が分からない人も、候補を見れば、自分の関心に近いものを探ることができそうです。
たとえば、展示会の講演案内に置き換えて考えてみます。「AIについて質問してください」という入力欄のそばに、「初めて学ぶ人向けの講演を探したい」「資料作成に使える話を聞きたい」という選択肢があれば、来場者は自分の目的を伝える手がかりを得られます。これはウィンブルドンでの運用ではなく、事例から考えた案です。
選択肢の文面は、来場者の目的に合わせて検討します。「セッション検索」と書くより、「これから参加できる講演を探したい」と書く方が、来場者は利用する場面を想像しやすくなります。案内画面には、候補となる講演の対象者や開始時刻も添えます。来場者が、自分の目的や予定に合う講演かどうかを確かめられるようにするためです。
回答に使う情報は、質問の内容に合わせて分ける
質問しやすい画面を作るには、その先で何を答えられるかも決める必要があります。Match Chatの開発者論文では、試合中に届くデータと、選手などに関する情報を組み合わせる構成を説明しています。試合の範囲を外れる質問には、別に用意した情報源へ振り分ける仕組みもあります。開発者論文・第3.4節、第5節
イベントの案内でも、「何時に始まるか」と「今から入れるか」では、回答に必要な情報が違います。開始時刻はプログラムで分かりますが、入場できるかどうかは、予約条件や当日の受付状況も関係します。運営担当者がチャットボットの回答範囲を考えるときは、次のように質問と元の情報を対応させると、準備が必要なものを見つけやすくなります。
表1 講演案内を想定した、質問と情報の対応例
| 来場者が知りたいこと | 回答のために確認する情報 |
|---|---|
| 初めて学ぶ人向けの講演はどれか | 主催者が確認した講演の対象者、前提知識、内容 |
| 次の講演は何時から、どこで始まるか | 最新の開始時刻、会場、変更の有無 |
| 予約していなくても入れるか | 予約の要否、当日受付の条件、満席時の扱い |
表1は編集部が作成した検討例で、実際に開発・検証したシステムの仕様ではありません。
たとえば、当日の残席数を更新する仕組みがなければ、AIに空席を尋ねても、確かな回答の材料がありません。その場合は、確認済みの受付条件を示し、残席は会場の窓口で確かめてもらう案内が考えられます。そのため、回答の準備には、元の情報を誰がいつ更新するかという相談も含めます。
次の案内では、来場者の言葉で質問を置いてみる
今回の事例で参考になると感じたのは、AIの回答だけでなく、質問する前の迷いにも目を向けている点でした。自分たちのイベントの案内ページでも、来場者が選ぶ質問を考えるところから始められます。
たとえば、次の講演会で使う案内ページを開き、「プログラム」という見出しを見ただけでは判断できないことを、運営担当者が書き出してみます。「途中から参加できるか」「専門知識がなくても理解できるか」。その問いに答える情報が原稿にあれば、質問の形で案内を添えられます。なければ、登壇者や主催者に確認する項目が見つかります。
AIを組み込む場合も、この整理は回答の範囲を決める材料になります。質問の候補を見ても目的に合うものがない人には自由入力を残し、答えられない内容は確認先へ案内する。どこまでを画面で伝え、どこからを人が受け持つかを、来場者の行動に沿って考えることができます。
補足と出典
公式発表は主催者と提供企業による説明、論文は開発に関わった著者による報告です。本記事では現地取材やMatch Chatの操作検証をしていません。質問候補の有無だけを比較した効果検証も確認していないため、問い合わせの削減や満足度の向上は断定していません。紹介した構成を、日本語のイベント案内にそのまま適用できると保証するものでもありません。
- IBM「ウィンブルドンの新たなAI機能」日本語版:原発表2025年6月17日、日本語版6月27日。対象大会の開催期間は2025年6月30日〜7月13日です。
- Baughmanほか「Match Chat: Real Time Generative AI and Generative Computing for Tennis」:2025年9月16日公開。2025年のウィンブルドンと全米オープンを扱う開発者のプレプリントです。本記事では主に第3.4節、第4節、第5節を参照しました。
- IBM「Wimbledon 2026の新機能とデジタル基盤」:2026年6月22日発表。対象大会の開催期間は2026年6月29日〜7月12日です。開催前に発表された機能説明として参照しています。
資料の確認日は、いずれも2026年9月27日です。
制作について:本記事は、資料の調査、構成案の作成、執筆・校正に生成AIを使用しています。検証した内容と確認できていない範囲を本文に示し、当社担当者の公開承認を経て掲載しています。